Do you know ネーミングライツ?

study | 2004年10月2日 8:11:45 | abex


昨日の記事に、ヤフーがネーミングライツで球場に「Yahoo! BB スタジアム」とつけてるのはどうなのよ?とコメントいただいたので『ネーミングライツ』(naming rights)について調べてみることにしました。

日本では、「味の素スタジアム」と「Yahoo! BB スタジアム」の2つが特に知られていますが、アメリカやヨーロッパでは企業広告の1つとしてポピュラーなものになっているようです。

ネーミング・ライツ(命名権)とは、スポーツ施設などの名称に、スポンサー企業の社名やブランド名を付与する権利のことであり、日本では全く新しい広告概念である。

アメリカでは、約70ものスタジアムがネーミングライツによって名前が付けられています。スポンサーや契約金がまとめられた一覧は以下のURLから見ることが出来ます。
http://espn.go.com/sportsbusiness/s/stadiumnames.html


『ネーミングライツ』がとても新しい言葉のように聞こえると思いますが、実はそんなに新しい言葉ではないようです。

Back in 1926, William Wrigley, chewing gum entrepreneur and owner of the Chicago Cubs, decided to name the team’s park Wrigley Field. Since then, many teams have followed in Mr. Wrigley’s footsteps.

つまり、1926年にはスタジアムに名前を付けるということが始まっていたわけですね。アメリカでは、ベースボールだけでなく、バスケットボール、ホッケー、フットボールの4大スポーツが盛んであり、半数以上のチームが企業との間でホームスタジアムの命名権売却を行っています。

最近話題のイチローが所属しているシアトル・マリナーズのホームスタジアム「セーフコフィールド」は、保険会社のセーフコ社が命名権を取得しています。

さて、日本では、どこのスタジアムが最初にネーミングライツを導入したかというと、「東京スタジアム」(現・味の素スタジアム)です。

サッカー・J1のFC東京と東京ヴェルディ1969の本拠地「東京スタジアム」が、ネーミング・ライツの導入を決めた。公共施設での命名権導入は日本初のことだ。

スタジアムや球場は、第三セクターや公共団体により建設、運営が行われています。そのほとんどが赤字。自治体がその赤字を補填しているため、「税金の無駄遣い」だと揶揄されがちですが、ネーミングライツを導入することで安定的な収入を得ることが出来ます。

Quoted from GENDAI NET

02年サッカーW杯のときに相次いで建設された競技場が赤字に苦しむ中で、東京都調布市の「味の素スタジアム」だけが異例の黒字を計上することが分かった。

2003年度の収支で約9500万円の経常利益を計上したそうです。味の素スタジアムには、ネーミングライツ以外にも広告枠があるので、必ずしもネーミングライツだけで経常利益が出たとは言えないと思いますが、味の素との契約が5年間12億円であることを考えると単純計算でも年間2億4000万円なので、売上増に貢献しているものと思われます。つまり、株式会社東京スタジアムの独立採算経営が成り立つためにはネーミングライツが不可欠だったわけですね。

また、Yahoo! BB スタジアムは、「グリーンスタジアム神戸」のネーミングライツをソフトバンクBBおよびヤフーのソフトバンク・グループ2社が神戸市との間で結んでいるため「Yahoo! BB スタジアム」という名前になっています。2003年4月1日から2005年3月31日までの2年間で契約料は合計2億円だそうです。

ソフトバンクBBおよびヤフーのソフトバンク・グループ2社が神戸市側と交わしたネーミングライツの契約期間は、2003年4月1日から2005年3月31日までの2年間で契約料は合計2億円となっている。この契約期間と契約金額について井上社長は、「Yahoo! BBブランドの浸透、およびソフトバンクグループ全体の企業イメージ強化に効果がある」として契約額が妥当であること、更にネーミングライツの効果が確認できれば2005年4月以降も契約更新の意思があることを明らかにした。

また、ヤフーは、スタジアムが公共の施設であるため、イベント等を行い、地域に貢献しているそうです。

また、地域密着という意味では、野球教室や親子参加型イベントなども頻繁に行っており、地域のコミュニティー活動にも積極的に参加しています。

では、なぜ企業はネーミングライツ契約を利用するのでしょうか?また、プロ野球へ新規参入することとどう違うのでしょうか?

味の素やヤフーは、特定のチームを支援しているわけではありません。ネーミングライツという契約によって、公共の施設の運営を支援しています。もちろん、それによる広告効果、広告効果による利益もあると思います。Jリーグやプロ野球の試合が行われれば、ニュースでは必ずと言っていいほど球場名、スタジアム名がアナウンスされるし、新聞や雑誌にも明記されます。つまり、ほぼ毎日多くの人の目に、それらの企業名が映るわけです。広告効果はかなり大きいのではないでしょうか。

もちろん、プロ野球へ新規参入することも広告効果は大きいでしょう。チーム名に企業名が入れば、ネーミングライツ以上の広告効果を得られると思います。ただし、それには公共性はありません。公共の利益だと思われているのであれば、それはプロ野球を12球団維持させるためには新規参入が不可欠な状況で参入の意思を表明したからでしょう。あくまでも企業の利益のためという部分が大きいように思います。

大阪近鉄バファローズは、チーム名にネーミングライツを導入しようとして野球協約の問題や周囲の反発によって断念したことがありました。これは、経営難に陥ったバファローズが、そのまま経営を続けながら収益性を向上させるために思い立った案だと思いますが、経営側がそのままであるという点では、ネーミングライツと新規参入の中間に位置するのでしょうか。まあ、野球協約でしっかり規定するとか、ネーミングライツがもっと一般化すれば、チームのスポンサーとチーム名に入っているスポンサーが異なることもポピュラーなことの1つなり得るような気がします。もちろん、ファンの愛着心のこともあるので、そう簡単なことではないと思いますが…。

また、ある記事にヤフーの方針を端的にあらわしているインタビュー記事があったので紹介します。

また、Yahoo! JAPANは以前から全方位をカバーするというか、特定のチームなどに偏らないスタンスをとっている。要するに、スポーツで言えばオリンピック(JOC)やFIFAワールドカップなどのオフィシャルパートナーとなり、全般のコンテンツを提供するといったかたちだ。すべてのお客様がそれぞれ好きなチームを持っているため、特定球団を揚げた瞬間にYahoo! JAPANのスタンスではなくなる。特定球団をサポートするというのは、既定路線として考えられない。

昨日の記事で紹介したYahoo! JAPAN ピンクリボンキャンペーン2004も公共性の高いイベントです。ヤフーに限らず多くの企業が、公共の施設、公共性の高いイベント、NPO団体を支援しています。

ネーミングライツは、単なる広告媒体、広告商品という見方よりも公共のモノ(施設やイベント、団体)を支援するための1つの形だと捉えると良いのではないでしょうか。(正解かどうかは別として、これを読んだ人それぞれの捉え方で良いと思います)

#このブログのコメントは許可したもののみが掲載されます。基本的には掲載OKにしていますが、スパムやいたずらは削除しています。昨日の記事に「YaooBBスタジアムというセンスもへったくれもない球場名についてはどう説明するのかな。学習障害のクソ豚が。」という“豚は死ねさん”のコメント(もちろん掲載前にバッサリ削除)に触発されて、「そういえば、ネーミングライツについてよく知らないなぁ~」と思い、今回の記事を書きました。自分も勉強になったので、スパムコメントもただ捨てるのはもったいないね(w